ビール:おいしく飲むには? 冷蔵庫ドアポケ、光の当たる場所、繰り返し冷やす、は×

ビール:おいしく飲むには? 冷蔵庫ドアポケ、光の当たる場所、繰り返し冷やす、は×

いやはや暑いっす! キンキンに冷えたビール、風呂上がりにいいっすねえ! 買い置き、買い置き……おー、冷蔵庫の奥から発掘!【浜田和子】

 「ちょーっと待ったあ!」。その声は、東京都練馬区、麻家酒店の深澤光子さんから上がった。「ビールが泣いてます」

 ビールのソムリエでありアドバイザーである「ビアテイスター」の資格者。店内はところどころ暗い。ビールの商品棚の蛍光灯が消してある。隣のジュース棚との間には黒い目隠しシート。「だってビールが傷んじゃかわいそうでしょう」

 ビールが弱いのは光、振動、温度。店は明るくなくちゃ、と日本の消費者は思いがちだが、蛍光灯の光でもビールは傷む。特に瓶ビール。茶色の瓶が多いのは、光の波長の中でビールを傷める光をシャットアウトするため。光にさらされ劣化すると、「日光臭」という、ぬれた段ボールのようなにおいになる。

 振動はビールの分子の活動を促す。酸化が進み、濁りが出て味も落ちる。だから冷蔵庫のドアポケットに入れると、開閉ごとにビールは悲鳴を上げている。そして温度。高温は振動と同じで分子の活動が進む。日の当たる店頭に箱積みされているようなものは「注意した方がいい」。一方、凍り付くような低温は、ビールの分子結合が崩れ、沈殿物が生じることもある。

 冷えているビールを買い、常温で放置し、飲む際にまた冷やす、と繰り返すのも劣化の元。スーパーで買った瓶ビールで実験。自宅のベランダに半日放置したものを再度冷やし、グラスに注ぐ。天候は曇り。ただし暑かった。どれどれ……う~ん、古本のような、カサついたにおい? 保管のよいものと比べて飲めば、違いは歴然だ。

 製造、運搬、卸、小売店ともにビールの特質を知っていないと、結果的にまずいビールになる。

 「ワインには気を使う人が最近は増えてきた。でもビールも同じ。鉄則は、飲む分だけ買う。飲む分だけ冷やす。店を選ぶ、です」

 なるほど。ではキンキンに冷やしていいのはグラス? 居酒屋で指のあとがつくほどグラスが冷えていると、サービス満点って気がします。

 NPO日本ビアテイスター協会の小田良司理事長(58)に聞くと「だめだめ!」。人間はきゅう覚で味わう動物だ。ビールやグラスが冷えすぎていると、香りがわき上がってこない。ヨーロッパなどで常温のビールがあるのは、まさにビールを味わうため。だからおすすめのグラスは「口の広いもの。清涼飲料として飲みたいなら、細長いグラスでどうぞ」。

 分かりました。でも上手に泡が立っているビールっておいしそう。ふと、先週行ったビアガーデンで、セルフサービスのサーバーから注いだら、泡8対ビール2になった記憶がよみがえった……。

 ◇プロが教える、注ぎ方のコツ

 で、サッポロビール(本社・東京都渋谷区)を訪ね、ビール製造責任者、長谷川真澄さんにプロの注ぎ方を教えてもらった。

 <1>きれいに洗い自然乾燥させたグラスをテーブルに置く。

 <2>グラスの底の中心めがけ3分の1ほど注ぐ。

 <3>大きな泡が消えるまで待ち、グラスの口まで注ぐ。

 <4>大きな泡が消えたら口から泡が2~3センチ盛り上がるところまで注ぐ。

 <5>ビールと泡の比率が7対3ぐらいになったらできあがり。

 宴会ではグラスを傾けて注いでました。「それではいい泡が立ちません」と長谷川さん。「注ぎ足しもよくないです」。気が抜け温まったビールに新鮮なビールを足してもおいしくならない。「最後に一つ、ビールをおいしくするコツをお教えしましょう」。思わず身を乗り出すと「楽しい雰囲気で飲むことですよ」。

毎日新聞 2005年7月15日 東京朝刊

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